音量について
ここまで、ゲインやEQの使い方、その意味や捉え方について書き綴ってきました。
記事を読んでいると、この記事で書いてあるセッティング方法は正しいのだろうかと疑問に思う方もいるかもしれません。結論からいうと正しいセッティングというのはありません。音楽は結局のところ、プレーヤーやリスナーがどう感じるかが全てなので、その人がいいと言えばそれでいい世界です。自己満足の世界です。
しかし、大多数の人がよいと感じる音楽には,人間の音楽の聞こえ方の普遍的な部分や物理的な性質が関係しています。世界で自分しかいい音だと思えない音楽よりも、自分も含めてより多くの人がいい音だといってくれる音楽のほうがいいですよね。
ここでよい音作りをするために一つ線引きをします。
それはPAのセッティングとギター(ベース)アンプのセッティングは目指す方向が違うということです。
PAは奏者の音をそのまま、もしくはより聞こえやすくして客席に届けることが仕事です。
なのでセッティングは、できる限り音の被りや余分な音を排除して、すっきりした音を客席に届けられるセッティングを目指します。そういった関係から多くの場合、PAのイコライジングは音を削る方向になります。
それに対して、ギターやベースのアンプセッティングは、楽器をできる限り鳴らす方向でセッティングします。ゲインのセッティングはPAと同じくダイナミクスを出し、SN比を下げるためにできるだけあげます。しかし、EQは楽器によって鳴り方が違うので、その楽器ができるだけよく反応するセッティングを出すために、EQはできる限り上げようとするイメージを私はもっています。これはつまみのセンターがPAは0に対して、ギターアンプは1/2だからとも言えます。実はギターアンプの電気的な性質で言うと,つまみはフル10でフラットです。それに対して,アクティブタイプのEQはセンターがフラットで,それより右だとブースト,左だとカットになります。そのため,ギターアンプはまずEQをフル10にしてから徐々に削っていくのが正しいという考え方もあります。私は1/2のセンターから作ってしまうのですが,やりやすいほうでいいと思います。
こういった背景から、ギターアンプ(ベースアンプ)の音量は、どのぐらいがいいのかを考えてみたいと思います。
ギターアンプやベースアンプは楽器本体と共鳴関係にあるということで、音量がある程度上がらないと楽器本体も鳴りません。しかし、ゲインの上げすぎと同じように、音量の上げすぎでもハウリングの問題が出てきます。そのため、ゲインとEQが適正にセッティングできていれば、楽器のミュートが歯切れよく決まる程度の音量がよいと思います。
これでギターやベースのセッティングは決まりと言いたいところなのですが、ここでもう一つ問題が出てきます。それはボーカルやドラムとの音量の兼ね合いです。生楽器はつまみを回して音量が上がるものではないので、ギターやベースが音量が大きい場合、中音ならモニターの返し、外ならメインスピーカーの音量を上げることでバランスをとります。
しかし、マイクで集音する性質上、音の被りやハウリングの問題が出ます。また、周りの楽器の音もマイクが拾うので、ステージの音も会場の音もどんどん悪くなっていきます。
そのため、その中でバランスが取れる程度にアンプの音量を調節しなくてはいけません。
この場合,バスドラムの生音の音量を基準にすると音作りがしやすいと思います。生楽器で低音の中心になる音なので,全体のバランスが決まりやすいです。ただし,それではアンプの音量が不足していて,十分なフィードバックが得られないこともあります。
ここまでくると、アンプの音量だけで調節するだけではまだ不十分だということに気付いた方もいるのではないでしょうか?
実は音量調節は音のかぶりの要素も考えることでうまくいくことがあります。つまりアンプの位置や向きを変えることでも対応ができます。
低音は壁に近づくほど強くなる傾向があります。そのため,会場によっては壁との距離を調節することで,必要以上に音量を上げなくても,十分な厚みを確保できるかもしれません。また,壁から離れていくと,壁から反射した位相のずれた音が反射してきます。低音は特にその影響を強くうけるので,アンプと壁の距離を調節することで驚くほど音がすっきりする場合があります。
また,アンプをステージの中央に向けると音が直接ボーカルマイクに向かってしまいますが,壁に向けるとその影響はボーカルには向かいません。そういったことも考慮しながらアンプの位置や向きを調節するとよいと思います。
私が目標としているブルースギタリストichiroさんのライブを聴きにいった時には,アンプをステージの下におろして,真逆に向けてライブをしていました。ただし,これでは音が聞こえないので,モニターで音を返していたと思われます。フィードバック感は得られていたので,おそらくモニターからそれなりの音量でギターが出ていたと思われます。
ギターアンプの音が小さい場合やアンプの向きが違う方向を向いている場合,ギターアンプやモニターの近くに立つことでも適切なフィードバックが得られるので,試してみてください。
レコーディングやPAの基本は音量調節とPAN設定といわれています。バンド側の音量設定がうまいと,PAスタッフの人もPAしやすくなっていい音で出してくれます。
自分の楽器も最高に鳴って,バンドも生き生きとした音が出る全体を見据えたセッティングが出せる状態を目指しましょう!
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バンドさん単位でもお手伝いいたしますので,興味ありましたらメッセージ下さい!
やらずにどうなのと思うより,試しにやってみて音作りによるバンドの変化を感じてもらえれば幸いです!無料で出張します😄
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